主権在民!共同アピールの会

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5・15 新宿ネイキッド・ロフト集会報告「個人情報保護法は社会をどう変えたか。」

 個人情報保護法施行後のメディア現場と社会の反応

  主権在民!共同アピールの会は、月1回程度のペースでトークイベントなどを企画している。その第一回目が5月15日、新宿のネイキッドロフトで開かれた。
 主権在民!共同アピールの会は個人情報保護法案拒否!共同アピールの会の流れを受けたグループ。第一部は個人情報保護法施行後のメディア現場の現状が報告された。
 外務省の処分者リストの情報開示を求めた『週刊金曜日』からは、伊田裕之副編集長が墨塗りされたコピーを示し、「個人情報保護」を理由に官僚の事故や不祥事が隠されている実態を報告。ミリオン出版の久田将義氏も、テレビ局とプライドやK-1の癒着を追っているが、個人情報保護法以降、内部情報が出にくくなっているという。最近「ダークサイド・オブ・小泉純一郎」という本を出したフライデー記者の岩崎大輔氏は、「役所が個人情報をたてに情報を出ししぶるのは予想されたこと。拒否されたらその足で情報公開セクションに行き、そこから担当部局に働きかけてもらったりする」と取材ノウハウを披露した。
 東京新聞社会部の佐藤直子記者も、「新人は役所から開示を拒否されると引き下がってしまいがちなので、絶対に引くなと教えなければならない」と新聞社内部の事情を語る。取材する立場の三人が共通して証言するのは、個人情報保護法による取材の不便や萎縮はない。それより名誉毀損訴訟の高額化のほうが取材を躊躇させる、ということ。
 続いて司会の野中章弘氏(アジア・プレスインターナショナル)が発言を求めたのはジュンク堂書店の福嶋聡氏。書店現場では書籍を注文した顧客が、個人情報だからと電話や住所など連絡先を教えないケースが増えたという。書店でも注文票の複写をやめるなど、 個人情報取り扱いに注意しているが、注文した顧客に同系統の書籍のDMを出すなどのきめ細かいサービスが躊躇されるという。アマゾンでは瞬時に把握・表示されるのだから聞いていて矛盾を感じる話だ。
 吉田司さんのトークイベントなどで共同アピールの会とも交流のある福嶋氏は、個人情報保護法施行後、対策ノウハウ本の続出に疑問を感じ、批判的立場からの書籍の必要を提案した人だ。

   隣近所に知られずに葬儀を出したい

 司会が、個人情報保護法の影響についてフロア発言を求めたところ、驚くようなケース、考えさせられるケースが語られた。取材に関わるケースをあげたのはジャーナリストの横田一さん。V字型滑走路案が出てきた沖縄の米軍新基地の取材で、地元名護市の建設業のドンについて取材しようと業界団体名簿などを問い合わせたところ拒否されたという。
日常の社会生活の中での過剰反応も指摘された。ウェッブ現代編集長の元木昌彦さんは、会社の同僚が出先で突然死したが、病院が原因などを教えることを拒否したと語った。歴史関係の編集をしているという参加者は、公害関係で地方自治体に資料請求したら、田中正造など歴史的人物の名前まで消されていたと発言。村田銃の村田まで機械的に個人名が消されていたというエピソードに笑いが起こる。地域でNPOの活動をしている東一邦さんは、知人の葬儀社から聞いた話として、年寄りが亡くなったがそっと来て遺体を運んでほしいという依頼があったという。隣近所に知られずに葬儀をしたい。近所との香典のやり取りなどが煩わしいということだという。そうまで近所づきあいを嫌い、プライバシーを守りたがる一方で、警察には家庭の事情などを把握していて欲しいという要望が強いらしい。コミュニティは壊れたし今さら関わる気もないが、何者かには守って欲しいのか・・・。
実は法律の定めで個人情報を常に把握され続けている人が存在する。いわゆるオウム新法で監視対象とされた旧オウムの構成員だ。旧オウムの参加者からは、公安のチェックの具体例が語られた。共同性や公共性を志向しないプライバシー感覚では、少数者の権利などは顧慮されないようだ。

   強いものが得をする

第二部として交渉していたウィニー制作者、金子勇氏の弁護人はキャンセルになった。前半の発言者と交代して前の席に着いたのは、弁護士の山口貴士氏、ノンフィクション作家の吉岡忍氏、漫画家の石坂啓氏、映画監督の森達也氏、CHANCEの岡本俊之氏。
はじめに山口貴士氏がウィニー問題について、「ウィニー自体は道具に過ぎない。本質は官庁などの情報管理がいかにでたらめかということだが、そこから目がそらされてしまった」と発言した。山口氏は消費者金融などを扱う立場から、個人情報保護法で強者が得をし、弱者にしわよせがくるという。山口氏によると個人情報取り扱いに関してのコンプライアンスで、企業から弁護士が講演を求められる機会が増えたそうだ。有名事務所でなくても1回で数万円の講師料だという。企業側は個人情報のセキュリティを高く設定するが、個人の側が個人情報保護法を使って自分の情報を守る仕組みにはなっているとは思えない。情報が出ないことによって、逆に被害者同士の連帯も阻害されるそうだ。
「聴衆のつもりが急に前に呼ばれた」という石坂氏は、今の日本の現実について「すでに曲がり角は曲がった。自衛隊が軍隊となって、わたし達の代わりに人を殺しに行き、頃殺されにいく時代、「平和」などと口にできるだろうか」と、聞くもののイマジネーションを問う。ワールド・ピース・ナウなどの運動に加わった岡本氏は、かつてのイラク戦争反対運動の高揚が退潮したのは、メディアの姿勢も大きいという。
そのメディア、特にテレビについて、森氏は「作るほうは何も問題意識がない。視聴率を取れればいいだけ。モザイクもクレームが続けば増える。ニュースで流れる街の映像もクレームがあれば足だけの画になり、ほとぼりが冷めれば元に戻る」といささか自嘲気味に語る。映像で何を伝えられるか、何をしてはいけないか。職能への思索と責任を欠いた姿勢は、しかし個人情報取り扱いマニュアル本ばかり売れる社会一般の反映ではないか。

   名前が最後の個人情報

吉岡氏は名古屋の中学生による恐喝事件取材での見聞から語る。事件の起こった街の朝の登校時、子どもを見送りにでた母親は一様に「学校で目立っちゃ駄目よ」と言ったそうだ。今まで目立って得なことはなかった。たとえば犯罪被害者も捜査当局にとっては証拠の一つに過ぎず、権力は被害者が発言して社会的に力を持つことを好まない。しかし、最近は被害者が行動して社会に影響を与えるようになった。そう吉岡氏はいう。よく「加害者の人権は尊重されるが、被害者の人権は無視される」という俗論があるが、被害者が事柄の中心になるというのは何なのか。権力やメディアとの関係も含め考えなおす必要がありそうだ。
さらに吉岡氏は、個人情報を示すことへの防御反応について、今まで人が隠しておきたい暗い部分はお互いに触れないできた。インターネット社会ではそうした暗い部分がいくらでもさらけ出されて、名前が最後の個人情報となっている。しかし、近代社会は実名を前提とした社会。インターネット社会は近代的思考が前提としてきた社会ではない。そこに恐さがあり不安が生まれる、という。「不安社会」「匿名社会」を利用しながら、公権力が支配しようというときに、情報化社会をどう捉えていけばいいのだろうか。

   魅力的な語り方を

インターネット社会については、吉田司氏が、ネット世界では誰でも別人格になれる匿名性の中で、大衆が大衆に向かって演技できるところに可能性を見ているのに対し、吉岡氏は、権力はすでにインターネットを操作できる対象とみて安心しているだろうとする。吉岡氏の観察では2チャンネルなども組織的に書き込まれているという。山口氏も、グーグルが決まったサイトを検索にかからないようにする「グーグル八分」の例をあげて、ネット社会の情報操作について指摘した。
ネット社会論にとどまらぬ社会全般の状況について、吉岡氏はメディアも官僚機構も企業も市民も全てが劣化しているという。東氏もNPO活動家にも問題意識はなく、行政の下請けを嬉々としてやるような側面を指摘した。森氏が嘆くマスメディアの劣化はあらゆる社会セクションに起こっていて、だからこそ報道機関は不祥事などニュースの題材に困らない。その報道機関が従来からの紋切り型の社会正義を振り回すとき、反発とメディア不信が増幅される。記者会見でJR西日本を追及した新聞記者の態度がTV中継され批判されたケースをあげて、吉岡氏はそのようなやり方では民衆に届かないという。
東氏も、これまで正しさばかりを言って、魅力を考えてこなかった運動のあり方を指摘し、保守支持の地域の町内会長とも共同して地域活動をしていく中から理解を広げていく方策を語った。
主権在民!共同アピールの会は、昨年以来、吉田司氏などが主導して、保守派の改憲論と戦後のサンフランシスコ講和条約体制の矛盾を露にする「靖国神社でのパフォーマンス」などを行ってきた。このトークイベントでも、運動の中心を「憲法9条を護る」ことに置くべきという塩見孝也氏の提起があった。また弁護士の田中早苗氏から、個人情報保護法では企業も困っている。与党の支持率も高くはなく悲観することはない、との見方も示された。

ネイキッドロフト
http://www.loft-prj.co.jp/naked/
アジア・プレス
http://asiapress.org/03about-us/
山口貴士氏
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/
森達也
http://www.jdox.com/mori_t/

ダークサイド・オブ・小泉純一郎(アマゾン)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862480101/250-9953396-3014647
ウェッブ現代
http://moura.jp/biglobe/